本日翻訳し紹介するのはthe New YorkerのMarch 20, 2023 Issueに掲載された記事で、タイトルは、”The Little-Known World of Caterpillars”(あまり知られていない毛虫の世界)です。スタッフライターの Elizabeth Kolbert による記事です。
Elizabeth Kolbert 氏は紙の誌面に記事が掲載される頻度が誰よりも高いのではないでしょうか。今回訳した記事は、毛虫の研究についてのものでした。スニペットは、”An entomologist races to find them before they disappear.”(昆虫学者は、新種の発見にしのぎを削っています。)となっています。
今回訳してみた困ったのは、”caterpillar”という単語です。すべて毛虫と訳しました。日本語で毛虫というと、チョウやガの幼虫で体表が毛むくじゃらの奴のことです。ただ、英語の”caterpillar”は、その毛虫を表す語として使われるのですが、もっと幅が広いのです。”caterpillar”は、あおむし、むかで、いもむし、ゲジゲジにも使われるのです。ですので、エリック・カールの有名な絵本「はらぺこあおむし」は、英語だと”THE VERY HUNGRY CATERPILLAR”です。この題名の”caterpillar”を毛虫と訳してしまうと、絵があおむしですので、毛虫じゃないだろっ!と苦情を言われそうです。そういう万難を拝して、今回は”caterpillar”は全て”毛虫”と訳しました。場面によっては、いもむし、もしくは、あおむしと訳したほうがしっくりくるところもあった気がします。まあ、”キャタピラー”と訳してみようとも思いましたが、いかんせんキャタピラーというと、ブルドーザーや戦車等の履帯をイメージする人が多いと思ったので止めました。
さて、この記事を読んで知ったことは主に2つです。1つは、この記事が最も強調したいことであると思うのですが、多くの昆虫が絶滅の危機に瀕しているということです。昆虫の黙示録(insect apocalypse)と呼ばれています。何でそんなことになっているかというと、人間が原因です。残念ながら環境悪化が急速に進んでいます。もう1つこの記事で知ったことは、毛虫の研究はほとんど手つかずであったということです。どうしても、見てくれが悪いですから、毛虫を好きな人が多くないわけで、専門に研究する人が少なかったのです。また、チョウやガの成虫は古くからの標本が残っていますが、毛虫の標本は残っていないということも知りました(毛虫は、アルコールに漬けると溶けるし、漬けないと腐るため)。現在でしたら、写真に撮って残せば標本の代わりの貴重な資料となるわけですが、つい最近までそんなことは不可能でした。
そうした状況ですので、昆虫好きな方は、毛虫を専門に研究することをおすすめします。割と容易に、○○チョウの幼虫(毛虫)を世界で初めて捕獲したなんて功績が残せるような気がします。人に勧めるのではなく、お前がやれば良いだろうとおっしゃる方がいるかも知れません。それだけはご勘弁下さい。私は、毛虫に刺されて肌がすごく腫れたことがあるのです。また刺されるとアナフィラキシーショックを起こすような気がします。死んじゃいますね。ということで、とにかく多くの昆虫が絶滅する前に、テクノロジーが進化して環境が悪化しないようになることを祈るのみです。父と子と聖霊の御名において、毛虫に祝福のあらんことを!アーメン。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。(ちょっと長文です。朗読している音声ファイルがあるのですが、47分もありました。)