本日翻訳し紹介するのはthe New Yorker のWeb版にのみ掲載の記事です。タイトルは”The Promise of Carbon-Neutral Steel”(まもなく実現?急ピッチで進むカーボンニュートラルな鉄鋼生産方法の研究!)です。
Matthew Hutsonによるコラムです。彼は、月に1度弱くらいのペースでコラムを投稿しています。かなり多いです。テクノロジーに関する記事が多いです。今回のコラムは、グリーンスチール(環境にやさしい製鉄技術)に関するものでした。サブタイトルは、”A new manufacturing technique could drastically reduce the footprint of one of our dirtiest materials.”(研究が進む画期的な製鉄技術!地球にやさしくない製鉄業界は炭素を排出しない技術が確立されるのを待っている)です。
鉄鋼というのは無くてはならないものです。建物、自動車をはじめあらゆるものに使われています。しかし、鉄鋼を産出する過程で膨大な温室効果ガスが排出されます。まあ、Hutsonが言うには、高校生でも分かるらしいのですが、製鉄の過程では、鉄鉱石とコークスを混ぜ高温にすることで、鉄鉱石に含まれている酸素を、コークスの炭素と結び付けることにより取り除くので、結果として大量の一酸化炭素や二酸化炭素が放出されます。その代わりに鉄鉱石に含まれていた酸素が取り除かれるので、硬くてしなやかで丈夫な鉄鋼が出来るというわけです。
で、現在コークス(石炭)を使わない製鉄技術の研究が進んでいて、通常の製鉄所と同等規模のパイロットプラントが作られ技術の確立のための研究が進んでいるそうです。その技術では、水素を使って、鉄鉱石内に含まれている酸素と結合させるので、炭素ガスではなく水(H2O)が排出されます。コスト的には旧来のコークスを使う場合より3割ほど高くつくそうです。3割ってそんなに割高ではないなと思いました。3割ぐらいだったら、法規制をしてその技術で作った鉄鋼以外流通させないとかしたら、地球温暖化を防ぐ効果も大きいのではないかと思ったりします。なんせ製鉄業が放出する炭素は全世界の7%を占めているのですから、それが大きく減るとなれば効果は大きいと想定されます。
しかし、現状では、それは不可能です。というのは、その技術に必要となる水素を十分に供給することが不可能だからです(現状では、1箇所のパイロットプラント用の水素の供給は出来ているが、それ以上の供給は無理)。2050年には鉄鋼の需要は現在の2倍になると推測されています。製鉄技術が現在のままであれば、排出される炭素も2倍になります。恐ろしいことです。おそらく、製鉄業が膨大な炭素を排出しなくなるようになるには、まだ30年はかかるでしょう。少しでも早くグリーンスチール(環境に優しい鉄鋼)の技術が確立されることを祈らずにはいられません。
では、以下に和訳全文を掲載します。