We Don’t Need Supersonic Travel—in the “New Normal,” We Should Slow Down
いまさら超音速旅客機は必要なのか?「ニューノーマル」時代の旅行はゆったりまったり楽しむべき!
If we’re going to take climate change seriously, it also needs to come with a new aesthetic.
もうそろそろ気候変動について真剣に心配すべきでは?今までとは考え方を変える必要があります。
By Bill McKibben June 9, 2021
新型コロナのパンデミックによって、私たちの旧来の慌ただしい生活様式がいくぶん緩やかになった気がします。さて、パンデミックが収束したら、私たちの生活はまた元の慌ただしいものに戻ってしまうのでしょうか?
どうやらそのようです。パンデミック収束後を見据えて、ユナイテッド航空が15機の超音速旅客機を購入すると発表しました。これによって、仕事でサンフランシスコから東京に行く際の所要時間は6時間となり、大西洋を股にかけた日帰出張も可能となります。
しかし、本当に喜ぶべきことなのでしょうか?気候変動対策という観点から見ると、気が狂っているとしか思えません。フリー・ジャーナリストのケイト・アロノフが指摘していますが、超音速旅客機の乗客1人当たりの炭素排出量は旧来のジェット機と比べると5~7倍にもなります。ユナイテッド航空の発表によれば、2030 年までに超音速での運用を実現しようとしており、運行当初から「温室効果ガス排出ゼロ」を実現するとのことです。「温室効果ガス排出ゼロ」と謳っていると非常に魅力的に聴こえるわけですが、ゼロなのは実現可能性であって、2030年になればそれが絵空事であったことが判明するでしょう。また、サステナブルな航空燃料を使用すると発表していましたが、15機が使用する燃料は欧州連合の供給可能量の2倍以上で、サステナブルな航空燃料の供給施設の拡充が必要となります。話がそれますが、環境に配慮するというなら、プライベートジェットをもっと増やすべきだという記事がフォーブス誌に載っているのを私は目にしたことがあります。意外に思う人も多いでしょうが、実は環境にやさしいようです。その記事の記者が記していましたが、大型機で予算の少ない旅行者を沢山運ぶよりも数人の富裕層をピカピカのプライベートジェットで運ぶ方が環境にはやさしいと説明してもなかなか信じてもらえないそうです。また、その記事では、プライベートジェットのシェアリングサービスが紹介されていました。それは、たとえて言うとプライベートジェットのカープール (ガソリン代節約のための隣近所の自家用車の輪番相乗り方式)のようなものです。
ところで、温室効果ガス排出量以外のことについて記したいと思いますが、気候変動のリスクを真剣に考えるのであれば、これまでと違った考え方をする必要があります。たとえば、地平線にいくつも風力発電機が連なっているのを見たら、荒涼とした土地が広がっていると感じていたのを、土地が有効活用されていると感じるくらい意識を変えなければなりません。また、昨年からパンデミックが続いているのを良い機会と捉えて、私たちは旅行する意義を再考すべきだと思います。少なくとも、これまでに仕事はリモートでもかなり多くのことが実行できることが明らかになりましたし、急いで移動する必要が無いことも明らかになりました。eメールのおかげで、あるいはZoomやSlackを使えばどんなに遠くにいる人とでもやり取りできるのですから。
ユナイテッドの超音速旅客機発注よりも興味深いニュースがありました。それは、早ければ2025年に英国の航空機開発企業Hybrid Air Vehicles(以下、HAVと表記)が世界最大の飛行船Airlander10の実用化を目指すというものでした。シアトルとバンクーバー、バルセロナとマヨルカ、リバプールとベルファストなどの都市間を定期的に運航する予定です。同社によると、この飛行船は、通常の大型航空機材と比べると乗客1人1マイルあたりの二酸化炭素排出量を90%減らせます。また、2030 年までに開発予定の完全電動化バージョンでは二酸化炭素排出量がゼロになります。環境にやさしいのが売りのようですが、乗り心地もとても良さそうです。飛行船ですから長い滑走路は必要ありませんし、ジェット機のような騒音も撒き散らしませんし、都市の中心地付近に着陸することもできます。また、飛行船の乗客は、大きな窓から景色を眺められますし、ゆったりとした機内を歩き回ることも出来ます。ジェット機と違ってシートベルトで座席に縛り付けられることもありません。もちろん、その飛行船では富裕層向けの豪華なオプションも用意されるでしょう。いつの時代だって、飛行機でそうしたサービスが無くなることはないのです。ゆったりとした飛行船で空の上で何日も滞在するというのはとても魅力的に思えます。既にスウェーデンの企業がその飛行船を1機発注していて、北極上空の遊覧飛行に使う予定です。その機体の装備は非常に豪華になる予定です。私は、その飛行船に乗ってみたいので、その費用を捻出するため、これから何年も節約生活をしようと思っています。
これまでのところ、パンデミックが終わった後のニューノーマルがどのようなものであるかを最も的確に記しているのは、SF作家のキム・スタンリー・ロビンソンだと思います。彼は、小説の中でたびたび地球温暖化問題を扱っています。飛行船による旅行は、彼の著書では度々登場します。彼の近著「The Ministry for the Future(本邦未発売)」の中にも飛行船に乗り込むシーンが描かれており、飛行船は離陸して、奇妙にふわっと浮く感じで上昇し風に少し押し戻されながら進んでいました。また、その気球はキャビン部分に車輪が付いていてそれを地面に接地させて電動モーターによる駆動で追い風であれば時速200キロでの走行が可能でした。ロビンソンの著書の中では、旅行者は何日も飛行船内に滞在して空中にとどまり旅を満喫していましたが、パイロットはのんびり飛ぶ鳥を見たり眼下の氷山を眺めたりしていました。HAVの飛行船が運行されるようになれば、それに乗って何日間も空中に留まって仕事をすることも可能になるでしょう。
ロビンソンが近未来を描いた小説の中では、空の旅だけでなく、海の旅についての記述もなされていて、太陽光発電パネルを搭載してモーターで駆動する船が登場していましたし、もっと大きな帆船も登場し、それには6つの帆が備わっていて、その帆は太陽光発電パネルとしても機能しているので、その船は風力と電力を同時に利用することが出来るので超高速での航行が可能でした。その小説の舞台となっている惑星の最重要人物である未来庁長官はその帆船に乗って優雅な船旅を満喫しつつ船上で仕事をこなしていました。大海原の波間を風の力と太陽光の力を借りての高速航行しながらの優雅な船旅でした。現実の世界でも、技術が進化して炭素の排出ゼロで超高速での優雅な旅が実現する日が来るのが待たれています。速さだけが求められているわけではありません。優雅さも必要です。
以上
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