春の園芸シーズン到来!種子カタログをめくって、野菜や花に関する蘊蓄(うんちく)を知るのは意外と楽しい!

Onward and Upward in the Garden  March 20, 2023 Issue

What We Learn from Leafing Through Seed Catalogues
種子カタログをめくることから学べること

They promise forty-pound beets, rhubarb that tastes like wine, tomatoes that look like stained-glass windows, and world salvation. It doesn’t hurt to dream.
種子のカタログには、40ポンドのビート、ワインのような味のルバーブ、ステンドグラスの窓のようにキレイなトマトなどが載っています。在来品種の種子は世界を救うことになります。カタログを見て 夢を見るのも悪くありません。

By Jill Lepore  March 13, 2023

1.春が来た!種子カタログの季節だ!

 あなたが求めるビート(beet:サトウダイコン)はどんなものですか?メイン州ウィンスローにあるジョニー・セレクト・シーズ(Johnny’s Selected Seeds)社のカタログには、ゼッポ(Zeppo:おそらくマルクス兄弟の末っ子の名前にちなんでいる)という名の種子が掲載されています。側根が少ないことが売りのビートの種子です。残念ながら、その種子ショップでは、5.50ドルのその種子は現在在庫切れしています。でも、幸いなことに、オレゴン州にあるテリトリアル・シーズ(Territorial Seeds)社のカタログから5グラム入りのゼッポ(Zeppo)の種子を4.35ドルで購入することができます。そのカタログの末尾にある注文フォームに必要事項を記入するだけです。ほとんどの種子のカタログと同様に、コロラド州のボタニカル・インタレスツ(Botanical Interests)社のカタログは、デトロイト・ダーク・レッド(Detroit Dark Red)というビートの種子を約100粒で2.69ドルで販売しています。その種子のカタログでの謳い文句は、”1892年以来のビーツの定番”(standard for beets since 1892)です。食味が良く保存性も高いという特性があり、カナダで主として栽培されてきたのですが、今では飽きられてそれほど人気があるわけではありません。それが流通するようになったのは、グローバー・クリーブランド(Grover Cleveland)が2度目の大統領になった年(訳者注:1893年)にミシガン州のD・M・フェリー・シード(D. M. Ferry Seed Company)社のカタログに掲載されて以降のことです。また、ミズーリ州のベイカー・クリーク在来種子(Baker Creek Heirloom Seeds)社は、全地球カタログ(Whole Earth Catalog:ヒッピー向けの雑誌でヒッピー・コミューンを支えるための情報や商品が満載されていた)にヒントを得て500ページ以上もある全種子カタログ(Whole Seed Catalog)を発行していて、ビートのさまざまな品種が美しい写真とともに4ページにわたって掲載されています。デトロイト・ダーク・レッド(Detroit Dark Red)も「最も人気のある多目的赤ビート」として掲載されています。他にも根っこが赤くならないゴールデン種のビートのクロスビー・エジプシャン(Crosby’s Egyptian:原産地ドイツ)という品種、葛芋に似たアルビノ(Albino)という品種、デンマーク原産で円筒形の赤い根が育ち過ぎのニンジンに似た品種、切ると断面がペパーミントキャンディのよう見えるイタリアの在来品種、そしてマンモスレッド(Mammoth Red)という名の巨大な品種(250種子で4ドル)などが掲載されています。ちなみに、マンモスレッドは重さは40ポンド(18キロ)にもなり、主として家畜の飼料とされます。また、マンゴールド・ハーリング(mangold hurling)と呼ばれる中世に生まれたスポーツで使われることもあります。マンゴールド・ハーリングは、私の知る限りでは、マンモスレッドを使う砲丸投げのような競技です。

 アメリカには 200 以上の通販種子会社があります。一度でも、その中のどこかに注文をしたことがある人は、郵便受けに種子のカタログが毎年のように届くようになった経験があるでしょう。ほとんどの場合、届くカタログの表紙は色鮮やかで、ラディッキオ(radicchio:イタリア原産のチコリ)の赤、マリーゴールド(marigold)の黄色、およびヒャクニチソウ(zinnia)のピンクが踊っています。通常は郵便受けには、地味な色彩のものしか入りません。毎年届く納税関連書類の味気の無い茶色の封筒や種々雑多な請求書や投資勧誘のDMやクレジットカードの入会勧誘のDMなどです。そんな中に色鮮やかな種子通販カタログが見えて、何かな?と思ったことがある人は少なくないはずです。現在では、種子は簡単にネットで注文することもできます。しかし、毎年、真冬になると、通販種子会社のほとんどが、ほぼ同時にカタログを郵送してきます。その行為は、糸付きの針の付いたカタログを私の家の郵便受けに投げ込んでいるようなものです。カタログに食いついたら種子通販会社に釣り上げられることが分かっていても、なぜか私は思い切り毎回食いついてしまうのです。彼らにとって、私はルアーで簡単に釣れるマスのようなものです。