本日翻訳して紹介するのは、the New Yorker のWeb版にのみ掲載の John Cassidy によるコラムで、タイトルは”Joe Biden’s Innovative Attempt to Reshape the American Economy”(バイデン大統領のアメリカ経済強靭化の革新的な試み)です。
さて、このコラムは2月8日にバイデン大統領が一般教書演説を行う前に John Cassidy が記したものです。その時点で、バイデン大統領が演説で就任後2年間の成果を誇ることは予測がつきました。昨年の夏あたりはインフレ率が高留まりしていて、バイデン大統領もマズいと思っていたでしょう。しかし、幸運なことに燃料費の下落とサプライチェーンの混乱の解消とFRBの利上げのおかげで、インフレも収束に向かいつつあることが明確になってきました。ですので、一般教書演説では、バイデン大統領が2年間の成果として、巧みに新型コロナパンデミックを乗り切ったこと、膨大な雇用を生み出したことを誇るだろうということが予想されました(実際そうでした)。
現時点では、このコラムをCassidyが記した時点と異なり、すでに演説が終わって内容が分かっています。主に語ったのは、2つで、産業政策と対中政策でした。前者は、グリーンエネルギーと半導体関連での支援を厚くすると同時に国内での製造(manufacturing)を増やすということでした。後者については、公正な競争をできるようにしたいとしていました。
私は思ったのですが、産業政策は良く練られた素晴らしいものだったのではないでしょうか。民主党内で事前によく練られたものだと思います。岸田首相の様に、軍事費増額と増税を発表して、身内の自民党内からも勝手に決めたと非難されるような失態はありませんでした。岸田首相には、良いと思ったことは実施してもらいたいのですが、党内調整をすることも必要だと思います。そんなんでは、勝手に決めて発表しても、実行段階で躓いてしまいます。ひろゆき氏なら、岸田首相の発表を聞いて、「それあなたの意見ですよね?」とツッコミそうです。
Cassidyは、バイデンの産業政策は内容は素晴らしいものの、実行し、成果を出すのはとても難しいだろうと主張しています。そもそもアメリカ商務省に産業育成に長けたスタッフがいるわけでもなく、そうしたことをしてきた実績も無いわけです。また、グリーンエネルギー産業と半導体製造業を強化して産業の中心にしたいと考えているようですが、10年とか20年後にそうした産業が育って経済の中心を担うようになるか否かは誰にも予測できません。
ところで、バイデンの一般教書演説を読むと、アメリカ国内の製造業を強化すべく、国内での工場新設には助成金をじゃぶじゃぶと投じるようです。バイデンがそうした施策を打ち出すことは前もって分かっていたようで、既に多くの企業が、海外の企業も含めて、アメリカ国内に工場の新設を矢継ぎ早に決めています。でも、アメリカって今まで、中国や欧州諸国がこれをやると不当な競争だとして非難していましたよね。それを自国でやるのはどうかと思います。しかも、これってトランプ前大統領が掲げて好評だった施策を丸パクリしただけです。それなのに、この一般教書演説の内容が素晴らしかったと賞賛するのは少し間違っているような気もしました。
では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。
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