「 AI が仕事を奪う」という概念はもう古い─本当に起きている“静かな仕事革命”の正体!

Open Questions

Instead of Taking Your Job, A.I. Might Transform It
AI はあなたの仕事を奪うのではなく、仕事のあり方を変えるものである

Proponents and critics of artificial intelligence often compare the technology to industrial automation—really, it’s more like an intern.
人工知能の推進派も批判派も、この技術を産業オートメーションに例えることが多いが、実際にはインターンのようなものである。

By Cal Newport June 5, 2026

1.AI と雇用のパラダイムシフト

 私は、高校の夏休みにコンサルティング会社でコンピュータプログラムを書くアルバイトをしたことがある。毎朝、ラッシュアワーの渋滞の中を車でニュージャージー州プリンストン近郊の、混雑した国道 1 号線沿いのビジネスパークまで行った。通信機器室のような場所にあるデスクで、社内用の簡易的なデータベースツールをいくつかコーディングした。勤務時間をタイムシートに記録する作業を簡素化するプログラムや、IT 部門の在庫管理を行うプログラムなどである。私の役割は、社内の従業員の作業を何とかして改善する方法を見つけることだった。

 これまでその仕事のことを思い出したことはなかったのだが、先日、人工知能がもたらす経済全体への潜在的な影響について考えを巡らせているうちに、ふと思い出した。AI 推進派も批判派も、この技術を産業オートメーション( industrial automation )になぞらえることが多い。かつて繊維産業や鉱工業などでは人力に頼る部分が多かったが、機械の導入によって多くの仕事が消えていった。同様に、AI は人間の知性を必要とする仕事を無くすという予想が世間では優勢なようである。今年 2 月にはマイクロソフト AI の CEO のムスタファ・スレイマン( Mustafa Suleyman )が、AI が今後 12~18 カ月以内に「ほとんどすべての専門業務において人間レベルのパフォーマンス」を発揮すると予測した。アンソロピックの CEO のダリオ・アモデイ( Dario Amodei )は、今世紀末までに初級レベルのホワイトカラーの仕事の 50% が自動化されると示唆している。オープン AI を率いるサム・アルトマン( Sam Altman )は昨夏、「多くの仕事がなくなるだろう」と述べた。ちなみに、オープン AI は、ニューヨーカー誌の発行元であるコンデナスト( Condé Nast )と契約を結んでおり、検索結果に同社のコンテンツを自由に表示することができる。

 しかし最近、この議論に変化が見られるようになった。エヌビディアの CEO ジェンセン・フアン( Jensen Huang )は 4 月のインタビューで「 AI は雇用を生み出している。AI が雇用を奪うと主張する者は、人々を怖がらせているだけである」と述べた。その後、AI を人員削減の理由に挙げた CEO は怠惰であり、そのような主張は「単に自分を賢く見せようとしているだけである」と主張した。アルトマンでさえ、5 月には AI が多くの雇用を奪うという自分の見解が「間違っていて嬉しい」と述べている。こうした発言は、AI に対する人々の懸念を緩和する目的であった可能性が高いのかもしれない。直近でクィニピアック大学( Quinnipiac )が行った世論調査によると、アメリカ人の 80% が AI についてどちらかと言えば懸念している、あるいは非常に懸念しているという。大多数がこの技術は日常生活に良い影響よりも悪い影響をもたらすと考えている。しかし、より根本的な問題として、自動化によって仕事が奪われるという推測は AI の影響を説明する正しい方法ではなかったということに、多くの人が気づき始めている。

 現状をより深く理解するために、ここのところ私はテクノロジー業界以外で AI を採用している企業を調べていた。あるジャーナリズム系非営利団体の CEO に AI の活用方法を尋ねたところ、アンソロピックのプログラミングエージェントであるクロード・コード( Claude Code )を使って独自に開発したウェブベースのツールを見せてくれた。このツールは毎朝、高等教育関連の記事を自動的に要約し、さらなる調査が必要となる可能性のあるトレンドを示唆したり、分析する方向性なども提案する。そして、その要約を CEO と編集長にメールで送信する。直近の要約では、人気の学習管理システム Canvas のデータ漏洩に関するロサンゼルス・タイムズの記事が取り上げられていた。編集長に対し、影響を受けた州の教育委員会に情報公開法に基づく情報開示請求を行うこと、Canvas の提供会社に詳細を尋ねることを提案していた。また、「 Canvas に対して警鐘を鳴らしている者はいなかったか?」と問いかけていた。このツールは決して目新しいものではないし、CEO は「一般向けの製品にするつもりはない」と述べているものの、有用な情報を提示し、アイデアを刺激するツールである。「まるで学生やインターン生のようである」と彼は言った。

 最近、その団体の CEO は AI で解決できる別の非効率性について考えていた。その団体の多くの記者は、その団体への資金提供者に仕事の成果をまとめて報告する際に、定型フォームを使っている。CEO はクロードコードにアクセスできるので、この情報をより非公式な方法で収集するボットを作れないか検討している。記者たちが既に利用しているメッセージングプラットフォームである Slack に直接最新情報を入力すれば、ボットが代わりにフォームに記入することもできそうである。「それほど難しくはないだろう」と彼は言う。数週間後に彼に連絡を取ったところ、資金提供者とのコミュニケーション文書の作成を支援するツールの作成は完了していた(まだ Slack との連携はできていなかったが)。

 私は別の AI に熱心な人物に話を聞いた。その人物は、とある海運会社の共同オーナーである。その会社の CFO を悩ませている「大きな頭痛の種」を教えてくれた。「何千もの顧客から支払いを受けているが、ほとんどの場合において何に対しての支払いであるかが明記されていない」と彼は言った。同社は顧客の行動を変えることを諦め、代わりに 4 人のスタッフを動員した。不明な小切手と対応する請求書を探させた。それを聞いて私が思い浮かべたのは、ディストピア系 Apple TV + シリーズ「セヴェランス( Severance )」のシシューポス( Sisyphean )である。職場が舞台であるが、シシューポスは膨大な文書に識別用の番号を割り振り、指定されたルールに従って整理する作業をしなければならない。しかし、今年初めに同社は IT 部門のスタッフに AI 搭載のコーディングエージェントへのアクセスを許可した。共同オーナーが語ったところによれば、何人かのスタッフがすぐにカスタムツールを構築し、照合作業の「実質的に 80% 」を自動化できたという。彼は現在、支払い照合に専念させていた担当者の 4 分の 3 をより有益な業務に再配置しているところである。これらの例は、自動織機のデジタル版ではない。自動織機は多数の人間から職を奪った。結局のところ、AI はこうした小規模企業や組織で非常に役に立っているのである。それは私が 10 代の頃にコンサルティング会社で役に立っていたのと似ている。つまり、役に立つものをいろいろと作ってくれるのである。