「 AI が仕事を奪う」という概念はもう古い─本当に起きている“静かな仕事革命”の正体!

3.「フリースタイルワーク」への進化

 今年初め、ピアソンは自宅のセントラル空調システムを交換する必要があったため、複数の空調設備会社から見積もりを取った。彼によると、各社の見積書はどれもチンプンカンプン( gobbledygook )だったという。そこで彼は、ソフトウェア開発のためではなく、どのエアコンを購入するかという現実的な問題に対処するために、クロード・コードを起動することにした。クロード・コードのような AI エージェントは、標準的なチャットボットとは大きく異なる点がある。標準的な大規模言語モデルと、ユーザーに代わって複数のステップを実行できる高度な制御プログラムが組み合わさっている点である。一般的にこの制御プログラムはハーネス( harness )と呼ばれる。ハーネスは、大規模言語モデルにステップバイステップの計画を作成するように要求し、各ステップの実行を手伝うよう指示し、結果の妥当性を確認する。ハーネスは、ユーザーのコンピュータ上のファイルを読み書きしたり、特定のツールにアクセスしたりする権限を持つ。「これにより、AI モデルを手助けし、様々なことを実行できるようにする」とピアソンは説明する。この過程で、AI は質問に答える神託者というより、仕事のパートナーのような存在へと変化していく。

 ピアソンは、受け取ったすべての見積書の PDF ファイルが入ったフォルダへのアクセス権をコーディングエージェントに与えた。そして、それらのファイルを読み、参照されているエアコンシステムの具体的な機種を特定するようエージェントに依頼した。エージェントはインターネットで検索し、各製品のユーザーマニュアルを見つけて、その機能に関するレポートを作成した。エージェントは作業を進めるにつれて、ピアソンのコンピュータ上にサブフォルダやテキストファイルといった形で、有用な知識ベースを構築していった。例えば、ピアソンが特定のユニットが自宅と隣家のフェンスの間に設置できるかどうかを尋ねた際は、エージェントは関連情報に容易にアクセスした。

 しかし、ピアソンはクロードコードに意思決定を完全に任せることはなかった。そこまでは信用していないのかもしれない。「これらのエージェントは、とんでもないことをたくさん言ったり、考えを頻繁に変えたりする」と彼は言う。つまり、厳重な監視が必要である。どちらかと言えば機械的な作業に最も適しているのかもしれない。ピアソンは、どの 空調システムを選ぶかを決定するまでに 20 回ものチャットセッションが必要だったという。しかし、彼はどれにするか決定したわけだが、その選択は非常に多くの情報に基づいたものであるが、自力で多くの機種の AC マニュアルをすべて読むよりは容易だった。彼は現在、日常業務のサポートにクロード・コードを定期的に使用している。最近では、50 種類の異なる上場投資信託( ETF )を調査・比較するのに役立てている。これは、複数のウェブサイトのデータを活用し、いくつかの統計を計算するためにスクリプト(単純なコンピュータプログラム)を使用するという複雑な作業だった。彼はまた、ニュースレターの編集にもクロードコードを使用しており、「この部分を上に移動して、この部分を後ろに移動して、このセクションを削除して次の記事で使用したい」といった音声コマンドを与えることもある。AI はピアソンの代わりに仕事をしたわけではなく、彼の仕事ぶりを向上させるのに役立っていると言える。「より高度な認知能力を要し且つ興味深いことに私が費やしている時間の割合は、おそらく以前より増えているだろう」と彼は語った。ピアソンはこのアプローチを「フリースタイルワーク( freestyle work )」と呼んでいる。それは、人間がコンピューターと協力してより高いレベルでチェスを行う、一種のフリースタイルチェスを連想させるからである。

 フリースタイルワークが近いうちに多くの職場に導入されるかどうかは現時点ではわからない。ちなみにアンソロピックは導入されると考えているようである。今年初めにはクロード・コードのオフィスワーカー向けバージョンであるクロード・コワーク( Claude Cowork )をリリースした。バイブコーディングで作られたカスタムメイドのソフトウェアは非常に便利である。ユーザーの特定のニーズに合わせて調整されているからである。だから、その普及はほぼ避けられないだろう。ウェブベースのソフトウェア企業の株価が急落していることが、それを暗示しているのかもしれない。AI は確かに仕事を変えつつあり、もし私たちが皆、パーソナル AI エージェントに命令を下し始めたら、仕事はもっと奇妙なものになるかもしれない。しかし、今のところ、このテクノロジーによって労働力が空洞化するという暗い未来像に向かって突き進んでいるようには見えない。何年も前のニュージャージーでの私の夏休の仕事は、コンサルタントの仕事を奪うことはなかった。むしろ、彼らの仕事への取り組みをより深めたのだと私は考えている。♦

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