アメリカは高齢化し過ぎ?もう限界!高齢者層が未来を食い潰す―若者を犠牲にする「老人支配」の現実!

Open Questions

Are Americans Too Old?
アメリカ人は高齢化しすぎているのか?

In “Gerontocracy in America,” the historian Samuel Moyn argues that the central conflict of our era is between the young and the elderly.
歴史家のサミュエル・モイン教授は著書『アメリカにおける老人支配』の中で、現代における中心的な対立は若者と高齢者の間のものであると主張している。

By Joshua Rothman June 12, 2026

1.老人支配

 あなたが住む国は変わりつつある。月を追うごとに、年を追うごとに、不穏なグループが勢力を拡大している。彼らはあなたの近所に移り住み、投票を行い、あなたの利益を顧みなくなっている。彼らは地域社会を大切にしていると主張するが、実際にはほとんど自分たちだけの利益を優先する。彼らの数は増え続けている。彼らの台頭が無視されてきたのは、主にポリティカルコレクトネス(人種や性別、年齢などに基づくあらゆる差別的な表現をなくすべきという考え方)によるものである。彼らをグループとして一括りに語ることは失礼だと考えられているのである。もしそうしたいなら、敬意を払い、畏敬の念さえ抱くような口調で、たとえ彼らが全権を握っていても、彼らのせいで生活がいかに苦しいかを語らなければならない。

 彼らとは、高齢者のことである。イェール大学ロースクールのサミュエル・モイン教授( Samuel Moyn )教授による新著「アメリカにおける老人支配( Gerontocracy in America )」は示唆に富んでいる。モイン教授が指摘しているのだが、アメリカの高齢層は、その時代錯誤的な政治姿勢とますます増大する存在感によって、アメリカ社会を根本的に変革しつつある。同時に彼が指摘しているのは、「歴史的に見て、高齢のアメリカ人は最も抑圧されてきた層の 1 つであり、現在でも虐待を受けたり、貧困にあえいだりする人が多い」ということである。しかし、より大きな視点で見ると、アメリカ人の寿命は年々伸びており、ますます健康になり、裕福になる傾向が強まっている。その結果、この国の運命と方向性は、若年期や働き盛りの前向きな人々ではなく、人生の残り 3 分の 1 に脚を突っ込んだ過去志向の人々によって決定されつつあるという。

 フランス語には、当たり前のことを述べるときに使う言い回しがある。「 enfoncer une porte ouverte 」で、既に開いているドアを力任せに突き破るという意味である。ベビーブーマー世代の数が膨大であること、ジョー・バイデン( Joe Biden )とドナルド・トランプ( Donald Trump )が史上最高齢の大統領であることは誰もが知っている事実である。モイン教授の指摘によれば、アメリカの高齢化の進行は、老化そのもののように、気づかないうちに忍び寄ってきたという。彼の著書のタイトルは、アレクシス・ド・トクヴィル( Alexis de Tocqueville )の「アメリカの民主主義( Democracy in America )」をもじったもので、老人支配、つまり高齢者による統治が、今やこの国の根本の土台となっていることを示唆している。「もしカマラ・ハリス( Kamala Harris )が 2024 年の大統領選で勝利していたら、就任時には 60 歳だった」と彼は指摘する。60 歳の彼女が若々しさを前面に打ち出して闘ったわけだが、それは老人支配が進むアメリカだから可能な選択肢だった。他の国では起こり得ないことである。

 この国の高齢化は驚くべき( gobsmacking )ものである。それを理解するには、統計を見るのが早いとモイン教授は説明する。1980 年のアメリカの平均年齢は 30 歳だった。つまり、アメリカ人の半数が 30 歳未満で、半数が 30 歳以上だった。現在、平均年齢は 40 歳近くになっている。かつては「年齢ピラミッド( age pyramid )」があり、若い世代が広い底辺を占め、頂点の高齢者層が小さくなっていた。現在そのピラミッドは長方形に変わってしまった。70 代や 80 代に達する人が増えており、出生率が低下しているため、いずれ上部が重い台形になる可能性さえある。1920 年には、65 歳以上のアメリカ人は 5% 未満だった。しかし、全米退職者協会( A.A.R.P. )によると 2060 年にその割合は 4 人に 1 人になるという。

 現在の有権者の年齢の中央値は 52 歳である。予備選挙に至っては 65 歳である。つまり高齢層の有権者が残りの有権者の選択を決定していることになる。「近年の選挙における献金者の平均年齢は 70 歳に達することもある」とモイン教授は記している。多くの政治家が献金者の意向を重視するため、当選した若い議員でさえ、自身の実際の年齢からイメージされるよりも保守的あるいは高齢有権者好みの行動をする傾向がある。しかも、そもそも若い政治家の数自体が多くない。連邦議会の議員の平均年齢は 60 歳を超えている。下院議員は 435 人いるが、1990 年代生まれはわずか 1 人、1980 年代生まれはわずか 64 人で
る。民主党議員は共和党議員よりもやや高齢化傾向にある。「 75 歳以上の下院民主党議員の少なくとも半数は 2026 年に再選を目指している」とモイン教授は記している。これはちょっとどうかと思う。民主党議員の高齢化が進んでいるのは、2022 年から 2025 年の間に 8 人が在任中に亡くなったという事実からもわかる。

 こうした状況が積み重なって、多くの若い有権者がより冷笑的で政治に無関心になっている。それには理由がある。高齢者は若者への投資よりも自分たちの社会保障を優先する政策を好む。それを示す証拠は十分にある。例えば、現在のアメリカの法律は高齢者が税金を回避しながら不動産を購入したり投資したりすることを容易にしている。また、健康状態が良い高齢者は 70 代まで働き続け、本来なら自分たちより若い世代が担うはずの職​​を明け渡さない。その結果、高齢者と若者の間の経済格差は拡大し、高齢者世帯の純資産は増加し、若者世帯の資産は減少している。「アメリカで住宅を所有する可能性が最も高い年齢層は 70 歳から 74 歳で、その割合は 80% を超えている」とモイン教授は記している。2 番目に高いのは 75 歳以上の層である。

 65 歳以上のアメリカ人は約 6,000 万人である。彼らの態度や意見について本当に一般化できるだろうか。「個人の寿命がだんだんと短くなるつれて、目の前に差し迫っている避けられない大惨事に直面して何もせず時間を稼ぐことは、これを回避したい、あるいは認めたくないという心理的に抗しがたい戦略である」とモイン教授は示唆している。少なくとも、誰しも年齢を重ねるにつれて思考が時代錯誤的になるという推論は皆無ではない。「ある調査によると、18 歳から 29 歳の人々の間で最も重要な外交政策問題は気候変動であるが、高齢者にとっての最大の問題はテロリズムである」とモイン教授は記している。私たちはあらゆる種類の重大な課題に直面しているが、モイン教授の分析が正しければ、未来を築くことに最も直接的に関わっている人々の中で支配的なのは現状維持に甘んじる人々である。「老人支配は、長期的な問題を放置して悪化させる傾向がある」とモイン教授は警告する。しかし、高齢のアメリカ人の力は決して専制的なものではない。民主主義的なものであり、一人一票の原則に基づくものである。これについて、何か対策を講じるべきなのだろうか?