A Booming Shadow Market of Sketchy A.I. Investments
怪しげな AI 投資のシャドウマーケットの急拡大
As OpenAI’s and Anthropic’s valuations soar, Silicon Valley outsiders are rushing to secure a small slice however they can.
オープン AI とアンソロピックの企業価値が急騰するにつれ、シリコンバレーの外部の人々は、あらゆる手段を使ってわずかな分け前を確保しようと躍起になっている。
By Kyle Chayka May 20, 2026
今月初め、自称ベンチャーキャピタリストでテクノロジー系スタートアップのアドバイザーであるアッシュ・アローラ( Ash Arora )の X の投稿がバズった。彼女は AI 投資関連の自慢話をポストしていた。「アンソロピック( Anthropic )社の未公開株( secondary )取引の仲介で大儲けした。それだけで 20 代で得た所得総額よりも多くのお金を稼いだ」と彼女は書いている。アローラは、経済誌フォーブス( Forbes )の 2024 年ヨーロッパ版の 30 歳未満で活躍する優れた起業家やリーダー、イノベーターを選出したリストにも名を連ねている。彼女は AI 大手企業の株式を購入する顧客の仲介役を務め、その見返りに高額の手数料を受け取っていた。しかし、彼女のオンラインでの自慢話が注目を集めたわけだが、批判する者も多かった。彼女の行為を訝しむ者も多い。あるコメント投稿者は、「彼女は免許を持ったブローカーディーラー(有価証券、株や債券などの売買を仲介・執行する業務を行う個人または法人)だと推測する。そうでなければ、彼女の行為は違法である。証券取引委員会が調査すべき」と書き込んだ。アローラ自身が免許を持ったブローカーなのか、あるいはブローカーと契約していたのかは不明である(彼女はコメントの要請に応じなかった)が、彼女はすぐに投稿を削除した。5 月 11 日、アンソロピック社は「当社株の不正販売および投資詐欺」に関するガイドラインを更新した。「取締役会の必要な承認なしにアンソロピック株を売却した場合、その取引は無効である」との記述がある。
以前からスタートアップ企業の株式を扱う「セカンダリマーケット( secondary market )」は存在していた。株式公開前の企業の株を取得したい買い手がいるからである。典型的なセカンダリマーケットでの取引では、特別目的会社( special-purpose vehicle:略号 SPV )と呼ばれる会社形態をとる投資シンジケート( investment syndicate )が、企業の創業者と他の利害関係者と直接やり取りして株式の購入を手配する。利害関係者は設立初期の幹部やエンジェル投資家などである。現在、AI 企業のセカンダリマーケットは活況を呈している。アンソロピック、オープン AI ( OpenAI )、そして最近イーロン・マスクの xAI と合併したスペース X ( SpaceX )などである。これらの企業の評価額は、急上昇している。仮想通貨のブーム時を彷彿とさせるスピードである。しかし、こうした取引の多くは怪しい部分が有り、正当性には疑問符が付く。まるでトレンチコートを着た男が歩道で商品を売っているようなものである。仮想通貨や AI 企業に投資するベンチャーキャピタルのディープベンチャーズ( Deep Ventures )を率いるマイク・チャン( Mike Chan )は、ここ数カ月間で大量のメールを受け取ったと私に語る。「どこかの新興国から来た、見知らぬ人物が、最大級の取引にアクセスできると言ってくる。誰がどう見ても怪しいと感じるだろう」とチャンは語る。彼はアンソロピックの株式取得に関してさまざまなオファーをもらったという。ちょっとだけ検討したが、すぐに手を引いた。「どう見ても怪しい」と思ったからである。
チャンが説明した取引は、ロシアの入れ子人形のように、何層もの仲介者が絡んでいる。典型的な取引は次の通りである。アンソロピックの従業員がいる。ここでは仮名でジョー( Joe )とする。ジョーは同社の株式の 100 分の 1% を保有する。アンソロピックの 1 兆ドルの評価額に基づいて、1 億ドルでその株式を売却することを決めたとする。いわゆる「第一層( first-layer )」の特別目的会社( SPV )がジョーから直接株式を購入する。完全に所有権が移る。これはセカンダリマーケットのよりクリーンなバージョンだとチャンは言う。第二層の SPV は第一層の SPV に投資し、第三層の SPV は第二層の SPV に投資する。ジョーのオリジナルの株式との間には 3 つの階層がある。チャンが現在目にしているオファーの多くは、第三層の SPV に関するものである。「ばかげている。投資家として、自分がどのような権利を有しているかさえわからない」と彼は言う。第三層の SPV 保有者となった場合、ジョーがわずかな株式を転売する時期について、何らかの影響力を及ぼすことは可能だろうか?そもそもアンソロピックの承認無しに転売できるのか?「人々はただお金を注ぎ込みたいだけで、細かいところまで調べない」とチャンは語る。デジタル資産とブロックチェーン技術に特化したデジタル資産投資ファンド、シニアス・キャピタル( Scenius Capital )の共同創業者のグレゴリー・ディンセリ( Gregory d’Incelli )は、「さまざまな SPV が間に入るごとに、構造はますます不透明になる」と指摘する。シニアス・キャピタルはいくつもの AI 専用 SPV ( A.I.-S.P.V. )に名を連ねているし、独自の AI 専用 SPV も組成し、人気のある予測市場企業への投資なども行っている。ディンセリが補足したのだが、少なくとも株券がどこにあるのか、所有権をどのように証明できるのかを確認する必要があるという。
通常、ベンチャーキャピタル企業では、キャリー( carry:投資で得た利益の中から受け取る成功報酬)が収益の大部分を占める。最近の多くの AI 専用 SPV のオファーは(アッシュ・アローラの自慢話に出てくるのもこれであるが)、1 回限りの初回設定費用と仲介手数料のみが発生する。AI 専用 SPV は投資に対する長期的な利害関係を持たない場合が多い。チャンとディンセリが目にした手数料は投資額の 15% 以上で、これは通常よりもはるかに高い。「 5% の手数料でもかなり高いと感じる」とチャンは語る。しかし、AI に関する誇大宣伝が蔓延っており、高いプレミアムを払っても AI 関連企業の公開前株式へのアクセスを得たいと望む者が膨大に存在している。シリコンバレーの部外者にはパイの分け前を得る方法が全く無いわけで、ディンセリの指摘によれば、そうしたアクセスを望むのも無理からぬことかもしれない。チャンが語ったのだが、最低 1,000 万ドルまたは 2,000 万ドルの出資を必要とする第一層の AI 専用 SPV を見たことがあるという。一方、第三層の SPV は、わずか 5,000 ドルの出資で済む場合もあり、参入障壁は大幅に下がっている(実際には、SPV の購入権は一定の条件を満たした適格投資家しか購入することができない)。ベルギーで第二層の出資の申し出を受けた人物がいる。匿名を希望したので、ここではヤン( Jan )とする。彼は、創業者兼投資家である。彼が感じたことを私に語ったのだが、地元の小さな肉屋が、何か大きくて輝かしいものの一部にならないかと誘われたようなものだという。
最も希薄化された投資案件でさえ魅力的に見える理由は容易に理解できる。アンソロピックは 2 月に 3,800 億ドルの評価額で資金を調達した。わずか 3 カ月後にはそれが 2 倍以上になった。以前は AI バブルを警戒する空気も皆無ではなかったが、需要を満たすために新しいデータセンターの建設が急ピッチで進められるにつれて、抑制のない強気感へと変わっている。シリコンバレーの多くの企業は、 既に AI 大手企業に資金を投入する機会を得ている。ウォール街の面々も機会を得ている。しかしながら、多くの個人投資家は、AI が自分たちの仕事を奪うのではないかと不安を感じながら、遠くから AI ブームを見守るしかない状況である。テクノロジーと芸術の融合をテーマに活動するコンセプチュアルアーティストであり、ソフトウェアエンジニアのスターリング・クリスピン( Sterling Crispin )は、第三層の AI 株式取引を、近年投資対象となった仮想通貨になぞらえる。クリスピンによれば、第一層の SPV への投資はビットコインの購入に似ているとし、正当性を感じさせる投資だという。しかし、第三層の SPV への投資は「クソコイン(価値の薄い暗号資産)に金を投げつけている」ようなものだという。
急成長を遂げている AI セカンダリマーケットは、金融ゲーム化という大きなトレンドの延長線上にある。カイラ・スキャンロン( Kyla Scanlon )などの経済学者は、仮想通貨、ミーム株、スポーツ賭博、予測市場などによって「カジノ経済( casino economy )」が形成されていると指摘する。カジノ経済とは、過剰な投機とリスクが常態化し、経済全体があたかも巨大なカジノのように機能している状態である。ギャンブルが当たり前になると、実績のない投資チャネルでリスクを取ることが合理的に見え始める。AI 分野にも、投機の形態は複数存在する。誰もが気軽に Forge や Hiive (スタートアップ投資のための株式市場として機能している)などの二次流通市場で株式を取引することができる。Hyperliquid のようなブロックチェーンベースのデリバティブプラットフォームで価格変動を予測して利益を得ることもできる。多くの経済学者が懸念するように、AI が「恒久的な下層階級( permanent underclass )」を生み出すのであれば、今のうちに何とかして利益を得ようと考えるのは自然なことである。インフレ率が異常に高く、住宅価格も異常なほど高騰している。チャンが指摘したのだが、大学に行って安定した仕事に就いて裕福になるという道筋が、今ではとてつもなく難しいものになった。それに皆が気づき始めている。チャンの見解では、セカンダリマーケットの熱狂の一因はオープン AI とアンソロピックが長期間非公開企業であり続けたことにある。両社の IPO が実現する頃には、個人投資家にとっては手遅れになっている可能性がある。なぜなら、過熱によって膨れ上がった企業価値は、下がるしかないからである。「これらの大企業が 1 兆ドルの評価額で上場すれば、個人投資家は大きな打撃を受けるだろう」と彼は述べる。「なぜなら、評価額が高すぎるからである」。♦
以上
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