なぜ天気予報アプリにイラっとするのか?気候変動時代の「外れる予報」との付き合い方と新アプリAcmeの挑戦!

Infinite Scroll

Why You Hate Your Weather App
天気予報アプリが不評な理由

As the weather becomes less predictable, we need forecasts that are better at telling us what we don’t know.
天候が予測しにくくなるにつれ、私たちが知らないことをより正確に教えてくれる予報が必要になる。

By Kyle Chayka March 25, 2026

 3 月は天候が変わりやすい。ラテン語で” intrat leo, exeunt agnus (ライオンが入ってくると、子羊が出て行く) “というように、3 月は上旬の荒々しい寒さの残る天気と下旬の穏やかで春らしい天気が入り混じる。今年の 3 月はそれが極端だった。私が住むワシントン DC では、気温が華氏 84 度(摂氏 29 度)で晴れた日があった。次の日は氷点下を少し上回る程度の温度となり雪が舞った。その直後に豪雨の予報が出て、竜巻警報も出た。一部地域の住民は避難場所を探し回った。結局は小雨が降っただけだった。こうした予報が空振りに終わる事例がしばしば発生する。故に、天気予報アプリ( weather apps )に対して不満を募らせている者は少なくない。私自身もたまにイラっとすることがある。朝にアプリで天気をチェックすると晴れのアイコンが表示されているのに、午後に雨が降るなんてことがしばしば発生する。Apple の天気予報アプリでは、ページの下方までスクロールしない限り、突風の予報は表示されない。先日、私の同僚がつま先の開いた靴を履いていた。その日は 1 日中極寒だったのに。理由を聞いてみたところ、出勤前にスマホの天気予報で最高気温が華氏 54 度(摂氏 12 度)と表示されたからだという。その日、実際に最も気温が高かったのは午前 2 時頃だった。さて、問題は天候の予測をますます困難にしている気候変動にあるのか?それとも、天気予報に組み込まれる度合いが高まりつつあるものの、しばしば期待外れに終わる人工知能にあるのか?あるいは、単に巷の多くのソフトウェアがエンシット化しているだけなのだろうか?※訳者注:エンシット化( enshittification )とはオンラインプラットフォームが成長過程で利益を最優先し、ユーザー体験を犠牲にしてサービス品質を徐々に低下させる(クソ化する)現象。

 おそらく 3 つのすべてが問題だと思われる。ユーザーからの苦情の量と内容から判断すると、天気予報はソーシャルメディアに次いで、大胆な変革が必要な分野と思われる。起業家のアダム・グロスマン( Adam Grossman )は、より良い天気予報アプリの開発に挑戦している。2 度目のことである。2010 年にクリーブランドへのロードトリップ中に突然の豪雨に見舞われた経験から、彼は悪天候のリアルタイム更新を専門とする Dark Sky を共同設立した。3.99 ドルのこのアプリは Apple の App Store で大ヒットした。Apple は 2020 年に Dark Sky を買収した。アプリのいくつかの機能を Apple の天気予報アプリに統合し、その過程でグロスマンを雇用した。しかし、Apple は 2023 年に Dark Sky を閉鎖した。ネット上で大きな抗議活動が展開されたからである。グロスマンは、Apple のソフトウェアの年間のアップデート回数が少ないことに不満を抱き、最終的には同社を退社した。彼は天気予報ビジネスから卒業し、新しいスタートアップを立ち上げるつもりだった。しかし、もう一度挑戦したいという誘惑があまりにも大きかった。先日、彼は私に語った。「使用する技術スタック、使用する手法、データの視覚化方法など、すべてが時間の経過とともに進化した」。しかし彼はこう付け加えた。「 Dark Sky をアップデートするたびに、多くのユーザーの怒りを買った」。2 月にリリースした新しいアプリ「 Acme 」で、彼は新たなスタートを切った。

 天気予報アプリにイライラしているユーザーは少なくない。おそらく、多くのユーザーが、普段の生活の中でそれに頼っているからであろう。予定を組んだり、服装を何にするとか通勤方法を考える時などに。Hello Weather というアプリの共同開発者であるジョナス・ダウニー( Jonas Downey )は、「アプリが信頼を失うのに時間はかからない」と語る。嵐を 1 度予測できないだけでも、ユーザーは代替アプリを探し始める可能性がある。ダウニーは、Dark Sky がサービスを終了して以降、「この市場に空白が生じている」と主張する。Acme のサブスク代は年間 25 ドルであるが、Dark Sky よりも意図的にシンプルなデザインになっている。アプリを開くと、「現在( Right Now )」の天候、「今後 24 時間( Next 24 Hours )」の予報、「今後 10 日間( Next 10 Days)」の予報が表示される。それぞれが、太字のテキストバナーの下に表示される。バナーは新聞の見出しのように目立つ。24 時間の予想気温が、黒い折れ線で表示される。3 時間ごとに天気を表すアイコンが付いている。しかし、ユニークなのは、もう 1 つ折れ線が示されていることである。薄い灰色の折れ線で、別の予測が存在していることを示す。薄い灰色の線は、メインの黒い線に非常に近い場合が比較的多い。稀に大きく乖離している場合もあり、その時間帯の予測の信頼性が低いことを示している。グロスマンは私に語った。「気候変動によって不確実性が増している。天気を完璧に予測できないことは残念であるが、その不確実性を知らせることは非常に重要である」。彼は例を挙げた。先日、彼の故郷であるコネチカット州で、午前は雪、夕方は雨の予報が出ていた日があった。その間の天候は非常に予測しにくかったという。Acme は、雨と雪の両方について異なる色の表示でそれぞれ 2 つの折れ線を表示することでこれに対処した。これによって、その日の予報が非常に困難であったことが視覚化された。

 一方、Apple の天気予報アプリは、予報を断定調で伝えるように設計されている。それが私の同僚の靴の件のような出来事につながる可能性がある。ホーム画面には時間ごとの予報が表示され、気温、天気を示すアイコン、そして暗い雨雲などの背景画像で構成されている。しかし、その時その場所の天候と一致しないこともある。また、そこに表示されている個々の情報があまり連携していないように見える。Acme は、「今日の午後は晴れ、夕方には一部曇り」といった文章による説明と降水確率をホーム画面に統合している。これは、グロスマンがテレビの気象予報士が提供するような物語性のある情報を「コンテキスト( context )」と呼んで重視しているからである。言葉は、単なる数字や絵文字よりも曖昧さを伝えるのに適している。Acme は、メイン予報とサブ予報の両方を示すことで、天気予報が決して万能ではないと注意喚起しているのである。

 各社の天気予報アプリに違いがあるといっても、それは主に表示方法だけである。ほとんどのアプリは同じデータセットと気象予測を利用している。それらは誰でもアクセス可能である。アメリカでは、国立海洋大気庁 ( National Oceanic and Atmospheric Administration:略号 NOAA ) と国立気象局( National Weather Service )がデータを一般に無料で開放している。有料ではあるが、ウェザー・カンパニー( Weather Company )、アキュウェザー( AccuWeather )、欧州中期予報センター( European Centre for Medium-Range Weather Forecasts )などからデータを取得することもできる。ほとんどの天気予報アプリは、これらのいずれかからのデータに依存している。Carrot という人気の天気予報アプリを開発したブライアン・ミューラー( Brian Mueller )が教えてくれたのだが、さまざまなデータセットとサーバー費用に年間 6 桁の金額を費やしているという。「 1 つの気象データソースだけでは、地球上のすべての人を満足させる予報を提供することはできない」とミューラーは言う。Acme の小規模な競合他社に対する利点の 1 つは、機械学習を使用してさまざまなデータソースと予測を比較しつつ統合していることである。また、狭いエリアの局所気候( microclimates )などの要因も調整しており、独自のカスタマイズされた予測を生成している。このアプリは独自のアルゴリズムを用いて、ユーザーに表示する情報をその時々に応じて決定する。例えば、悪天候が予測される場合は、スクロール画面の上部にレーダーマップが表示される。

 天気予報アプリの開発においては 2 つの難題がある。1 つは天気を正確に予測することである。もう 1 つは、すべてのユーザーにとってどこにいても機能するものを設計することである。「誰もが自分専用の天気予報アプリを欲しがっている」とミューラーは語る。例えば、ロサンゼルスの住民は空気の質をより気にするかもしれないが、ボストンの住民は雪の確率を知りたいと思うかもしれない。Carrot は不完全ながらもユーザーにそれらの解決策を提供している。ユーザーはディスプレイ表示をカスタマイズし、どの情報を前面に表示するかを選択することができる。背景には雑然とした画像と皮肉なジョークが表示されている(ジョークは他愛のないもので「気温は低いが、あなたに対する私の軽蔑はさらに低い」といった具合である)。Hello Weather は、紫外線や風などのさまざまな統計情報をタイル状に画面を分割して表示している。3 つの中で最も洗練された Acme の解決策は、どんな時でも最も重要な情報に基づいて最小限の情報を表示することである。Hello Weather のダウニーが私に語ったのだが、現在の政治環境を最も懸念しているという。トランプは NOAA への予算を削減し、信頼できる科学的測定を担当する他の機関への資金提供も削減しようと画策している。そのため、天気予報に対する人々の信頼は損なわれつつある。 「人々は天気予報データへの信頼を失い始め、アプリへの反感はさらに高まっている」とダウニーは語る。Acme は、アプリが

全知全能ではないことを前面に出すことで、逆にユーザーの信頼を獲得している。今、この記事を書きながらそのアプリを見ているのだが、今日の午後は雨が降る可能性は低いと表示されている。同時に、雪の可能性を示唆する別の予報も示されている。少なくとも、確かなことは分からないということだけは明らかである。♦

以上