The A.I. Industry Is Booming. When Will It Actually Make Money?
AI 産業は急成長している。さて、実際に収益を生み出すのはいつになるのか?
As Elon Musk sues his former OpenAI partners, A.I. companies are expanding rapidly, but profits are still scarce.
イーロン・マスクが OpenAI でのかつてのパートナーを提訴している。AI 業界は急速に拡大しているが、利益は依然として限定的である
By John Cassidy May 4, 2026
お金と権力をめぐって 2 人の億万長者が争う姿に興味のある方は少なくないだろう。そんな方たちのために、私はオークランドの法廷を紹介したい。世界一の富豪イーロン・マスク( Elon Musk )が、オープン AI ( OpenAI )の共同創設者 2 人、サム・アルトマン( Sam Altman )とグレッグ・ブロックマン( Greg Brockman )を訴えている。マスクは、オープン AI ( OpenAI )が転換したことで自身が騙されたと主張している。問題視しているのは、2018 年にマスクが退社した後に、非営利団体として設立された OpenAI が営利企業に変わったことである。ちなみに、オープン AI は、本訴訟は「違法な嫌がらせキャンペーン」であると主張している。4 月初旬には、マスク自身が運営している会社( xAI )を有利にするための妨害行為であるとして反訴した。マスクが連邦地方裁判所に対して求めたのは、オープン AI の転換を無効とすること、アルトマンとブロックマンを排除すること、最大 1,500 億ドル(誤植ではない)の損害賠償の支払いである。様々な証拠といくつもの証言から分かったことがある。マスクが 2017 年にオープン AI の同僚に送ったメールがある。その中で、「スタートアップを立ち上げるための資金を実質的に無償で提供している私の行為は、愚かな行為の見本ではないか」と自問している。しかし、他のことも判明している。それ以前のことであるが、 2015 年に彼は非営利団体と並行して営利企業を設立することを提案していたのである。
ブルームバーグ・ビリオネア指数( Bloomberg Billionaires Index )によるとマスクの総資産額は 6,510 億ドルである。彼が陪審員を説得して有利な判決を勝ち取れるか、あるいは、巨額の賠償金を手にできるかどうかは、現時点ではわからない。いずれにせよ、生成 AI は今や様々な資本が入り乱れての競争の渦中にある。オープン AI、アンスロピック( Anthropic )、グーグル( Google )、メタ( Meta )、マスク自身が率いる xAI 、その他いくつもの企業が競い合っている。21 世紀を決定づける産業であると誰もが信じているこの分野での支配権を確立しよう躍起である 。オークランドでマスクの民事訴訟が始まった頃、ウォール・ストリート・ジャーナル( Wall Street Journal )は、2022 年 11 月にチャット GPT ( ChatGPT ) をローンチして以来業界をリードしてきたオープン AI に関する記事を掲載した。報じられたところによれば、同社はデータセンターへの巨額投資を正当化し、株式公開を実現するために野心的な収益目標を掲げているのだが、どうやら達成できていないようであるという。この報道を受けて、AI 関連株は一時的に売り込まれた。しかし、その週の後半には、ナスダック( Nasdaq )と S&P500 指数はともに史上最高値を更新した。ビッグテック企業 4 社、アルファベット( Alphabet )、アマゾン( Amazon )、メタ( Meta )、マイクロソフト( Microsoft )が相次いで 2026 年第 1 四半期決算報告で健全な成長を報告したからである。AI 関連の収益も伸びていた。今年、4 社は AI 投資に 7,000 億ドル以上を投じる予定である。
この数字も誤植ではない。これらのビッグテック企業はいずれも独自の生成型 AI モデルを開発している。しかし、莫大な投資の大部分はクラウドコンピューティングインフラに注がれている。それが、AI 駆動型経済のコンピューティング基盤となると予測している。この資金投入額は信じられないほど莫大な数字である。ちなみに、世界第 5 位の経済大国であるイギリスの昨年の事業投資総額が約 4,030 億ドルである。ハイパースケーラー( hyperscalers )とも呼ばれることが多いこの 4 社だけが AI インフラに多額の投資をしているわけではない。オラクル( Oracle )や、コアウィーブ( CoreWeave )、エヌスケール( Nscale )、ランバダ( Lambda )といったいわゆるネオクラウド企業( neo-cloud company )も投資している。☆訳者注:ネオクラウド企業とは、人工知能や機械学習のワークロードに特化し、高性能な GPU インフラを提供する次世代のクラウド事業者のこと。
一方、あらゆる規模と種類の企業が AI ツールの導入に奔走している。オープン AI は収益目標の達成に苦戦しているかもしれないが、アントロピック( Anthropic )は違う。同社は、昨年、ターミナルで動作する自律型コーディング・エージェントである Claude Code (クロード・コード)をリリースし、続いてウェブ版もリリースした。以来、目覚ましい成長を遂げている。同社が先月発表したところによると、30 万社を超える法人顧客を抱え、「ランレート収益( run rate revenue:直近の月を基準とした年間収益)」が 2025 年 1 月の約 10 億ドルから 300 億ドルに増加している。つい 2 年前には同社に年間 100 万ドル以上を支払う顧客がわずか 12 社しかなかった。今年 2 月には 500 社以上にまで増加している。
AI ツールが急速に普及しているわけだが、多くの AI ユーザーはいつ利益が増加するのかということを気にし始めている。昨年 11 月に発表されたマッキンゼー( McKinsey )の AI に関する調査結果は非常に引用される回数が多い。回答者の 94% がこれまでのところ投資に見合った利益を得られていないと答えている。まだ多くの企業で AI 導入がパイロット段階であり、財務上のメリットが明らかになるまでには時間がかかるのかもしれない。しかし、データイク( Dataiku:AI および機械学習ツールを提供しているソフトウェア企業)が各企業の最高情報責任者を対象に行った別の調査では、幹部の 3 分の 2 以上が AI 投資に関して否定的な見解を持ち始めている。今年半ばまでに財務目標が達成されない場合、AI 関連投資予算は凍結または削減される可能性が高いと回答した。企業の利益(と株価)は過去最高を記録するほど急増しているのに、経済全体や労働者にとっては好ましくない状況は利益のパラドックス( profit paradox )として知られる。この問題が、多くの議論を巻き起こしている。 AI の楽観論者が、一部の大企業では AI によって既に効率性の向上が顕著であると報告している。また、現在莫大な利益を上げている一部のビッグテック企業は、事業を構築する過程で長年にわたって損失を出していたことも指摘している。アマゾン( Amazon )はその典型的な例として知られている。悲観論者は、19 世紀半ばの鉄道ブームや 1990 年代後半のドットコム・バブルなど、過去にテクノロジー主導で起こったブームが崩壊した例を指摘する。
たとえ賢明な楽観主義者であったとしても、一部の AI 企業の財務状況には疑問符が付くと思うだろう。オープン AI とアントロピックはどちらも資金を浪費しており、外部からの度重なる資金注入に依存している。その中には、循環的な性質から注目を集めているものもある。だが、ハイパースケーラーは事情が異なる。既存事業から莫大な利益を生み出しており、直近の四半期では合計で 1,500 億ドル近い純利益を上げている。その一部を巨額の AI 投資資金に充てることができる。しかし、オープン AI やアントロピックなどはオラクル( Oracle )やネオクラウド企業と同様に多額の借り入れもしており、財務体質がそれほど強固ではない。ブルームバーグによると、AI 関連企業の負債総額は 3,000 億ドルを超えている。新たな株式発行や出資で容易に資金を手当てできる限り、AI の構築は継続し、エヌビディア( Nvidia )のようなハードウェア企業やアマゾンやグーグルのようなクラウドプロバイダーに恩恵をもたらすだろう。しかし、究極的には、実際の AI アプリケーションが、インフラやモデル構築へのすべての支出を正当化するのに十分な収益と利益を生み出す必要がある。
AI 業界のすべての動向を把握するのは難しいが、次の 2 つの基本的な疑問を頭の片隅に置いておくべきである。それは、AI 製品の潜在的な市場規模はどれくらいかということと、 誰がそこから利益を得るのかということである。スタンフォード大学で AI に関する経済のコースを教えているルティメーター・キャピタル( Altimeter Capital:くテクノロジー特化型の著名投資会社) のアプルーヴ・アガルワル( Apoorv Agrawal )が最近行った講義は示唆に富んでいる。アガルワルの推定によれば、アルファベット( Alphabet )はクローム( Chrome )ブラウザ、アンドロイド( Android )オペレーティングシステム、ユーチューブ( YouTube )動画共有サービスを通じて、世界中で約 40 億人にリーチしている。主に広告収入でユーザー 1 人あたり年間約 100 ドルの収益を生み出しているという。メタ( Meta )は Facebook、Instagram、Messenger、WhatsApp を通じて約 35 億人にリーチし、ユーザー 1 人あたり年間約 70 ドルの収益を生み出している。オープン AI の直近の発表によれば、週間のアクティブユーザー数は 9 億人を超えている。しかし、アガルワルの計算によれば、チャット GPT はユーザー 1 人あたり年間約 10 ドルしか生み出していない。アガルワルは私に送った電子メールで、AI の将来について非常に楽観的に考えていると記している。彼は学生たちに、チャット GPT のユーザー数について「問題は、10 億人を 40 億人に増やすにはどうしたらいいかということにある。知識労働に使うだけでは不可能だろう」と述べた。「 2 つ目の問題は、年間 1 ユーザーあたり 10 ドルの収益を 100 ドルに増やすにはどうしたらいいかということである。サブスクリプションモデルがその答えになるとは思えない」。
チャット GPT ユーザーの大多数は無料版を利用している。アガルワルは、広告が最終的にはオープン AI や他の AI 企業に大きな収益源をもたらし、それが AI 企業の収入の足枷を外す可能性があると示唆する。AI 企業はユーザーに関して多くの情報を収集しているので、広告を効果的にターゲティングできるはずである。アルファベットはグーグル検索エンジンに AI を組み込んでいる。先週発表された最新の四半期決算で、同社 CEO のサンダー・ピチャイ( Sundar Pichai )は、この事業部門の収益が 19% 増加し、検索クエリが過去最高を記録し、「 AI エクスペリエンスが利用を促進している」と述べた。
もう 1 つの大きな問題は、AI 業界が長期的にどれほど競争力を持つかということである。規模が大きいからといって必ずしも富が得られるとは限らない。例えば、小売業界は巨大な産業だが、競争が激しく利益率は低い。食品業界や旅行業界も同様である。従来、IT 業界は少数の巨大企業によって支配され、利益率は非常に高かった。規模の経済とネットワーク効果( network effects:製品やサービスの利用者数が増えるほど、そのサービス自体の価値が既存・新規ユーザー双方にとって高まる現象)によって、AI 業界も同じ方向に向かう可能性がある。もしグーグルが消費者向け AI を、アントロピックが企業向け AI を支配することになれば、この業界は検索やソーシャルメディアのように独占または寡占に陥った他のデジタル市場に似たものになるだろう。しかし、そうなると、オープン AI やメタなどの他のプレーヤー、そして彼らが構築しているインフラは市場に留まることができるだろうか?
現在、この業界での競争は熾烈を極めている。アントロピックがビジネスユーザーの獲得に成功したことを受け、オープン AI は Codex をはじめとする各種ツールを強化している( Codex は、GPT-5.5を基盤とする高度なAIコーディングエージェントで、自然言語の指示でプログラミングコードの生成、バグ修正、テスト、アプリ・Webサイト制作などを自律的に行い、エンジニアリング作業を大幅に高速化するコーディングエージェント)。先月に同社の最高収益責任者のデニス・ドレッサー( Denise Dresser )がj述べたところによれば、有料ビジネスユーザーが 900 万人に達し、企業からの支払いが収益の 40% 以上を占めているという。メタ 、xAI なども自社モデルに多額の投資を行っている。また、ニッチ市場の開拓を目指す AI スタートアップ企業も数え切れないほど存在している。オープン AI がリリースした GPT-OSS などのより安価なオープンソースモデルや DeepSeek-R1 なども将来的に一部のビジネス分野で普及する可能性がある。
要するに、長期的な予測をすることは全く不可能な状況である。さて、AI 主導で株式市場が上値を飛ばしている最中であるわけだが、過去の教訓をいくつか思い出す必要があるかもしれない。2021 年の論文で、経済学者でベンチャーキャピタリストでもあるビル・ジェーンウェイ( Bill Janeway )は、「生産的バブル( productive bubbles )」という言葉を使っている。これは、鉄道ブームやドットコム・バブルの崩壊の過程を説明する語である。いずれも崩壊したわけだが、変革的な新技術への投資過熱が結果的に貴重な生産的資産を将来の世代に遺した。鉄道網、電力網、光ファイバー網などである。ちなみに、非生産的バブル( unproductive bubbles )という語もあり、これの代表例には、17 世紀のアムステルダムのチューリップ・バブル( tulip mania )、2021 年のミーム株現象( meme-stock phenomenon:SNS 上で個人投資家が結託し、企業の業績や財務状況といった本来の価値・ファンダメンタルズに関係なく、話題性やユーモアだけで株価を短期間に急騰・急落させる投資現象)などがある。昨年、別の論文でジェーンウェイは、生成型 AI が最新の生産的バブルになる可能性があると指摘した。私は、先週彼と連絡を取った。直近の状況を見ても彼のその主張は変わっていないことがわかった。彼は、1873 年恐慌( the Great Panic of 1873 )の後、120 以上の鉄道会社がデフォルトしたことを指摘する。2000 年から 2001 年にかけてのドット・コムバブル崩壊後には、数え切れないほどのインターネット企業が倒産した。大手通信インフラプロバイダーのワールドコム( WorldCom )とグローバル・クロッシング( Global Crossing )も倒産した。「今回は何が違うというのか?」と彼は指摘する。「マイクロソフトとアルファベットが既存事業から莫大な独占的利益を得ていることは理解できるが、オープン AI やアントロピック、そしてコアウィーブなどはワールドコムと同じ運命を辿るのではないか?」
現在はまさに AI ゴールドラッシュの最中にあるわけだが、関わっている者たちには、立ち止まってじっくり考える時間的余裕はない。彼らは他者に先んじて覇権を確立することに忙殺されており、中には競合相手を貶めようとする者もいる。もしマスクがオークランドでの訴訟で勝訴すれば、オープン AI の将来は不透明になるだろう。しかし、AI 全体の将来、そしてそれが生み出した市場の熱狂は、より大きな経済メカニズムに左右されるだろう。♦
以上
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