人類史上最大の AI バブルが崩壊する!?1873 年の恐慌の悲劇が予言する崩壊へのカウントダウン!

The Financial Page

Lessons from the Original Tech Bubble
初代 IT バブルから学ぶ教訓

As the SpaceX I.P.O. kicks off what is expected to be a wave of A.I. offerings, a new book turns to another speculative era—the railroad boom that culminated in the Great Panic of 1873.
スペース X の新規株式公開(IPO)を皮切りに、AI関連企業のIPOラッシュが予想される中、ある新刊書は、別の投機的な時代、すなわち1873年の大恐慌で頂点に達した鉄道ブームに焦点を当てている。

By John Cassidy  June 15, 2026

1.現代の AI 投資ブームの加熱状況

 好況と不況を繰り返すのは、資本主義の昔からの特徴である。そして、それは人間の創造性や希望、欲望、FOMO ( Fear of Missing Out:取り残されることへの恐れ)、不安、パニックといった特質を捉えているため、これからもずっと続くだろう。創造性はテクノロジーの進化と革新的な発明を生み出し、それが経済の新たな原動力となり、多くの投資家がそれに注目する。今日、私たちは新たな投機ブームの中で生きている。言うまでもないことだが、今回の革新的な発明は AI である。先週のスペース X ( SpaceX )の IPO は、AI は魅力的で凄まじい影響力があることと、多くの投資家が FOMO に駆られていることが示された。イーロン・マスク( Elon Musk )は印象的なロケットと衛星の会社を創設したわけだが、IPO の評価額は驚愕の 1 兆 7,800 億ドルであった。宇宙空間に AI データセンターを構築するという野心的な計画の魅力でこの価格のほとんどを説明できる。だが、これはまだテスト段階にさえない。

 スペース X の株式公開に続いて、アンソロピック( Anthropic )、オープン AI ( OpenAI )など他の AI 企業も株式公開を行う可能性が高い。それらの想定される IPO 価格も非常に大きな額であるし、多くの AI 関連企業の株価が急激に上昇している。エヌビディア( Nvidia )、マイクロン( Micron )、アーム( Arm )などである。だから、ごくごく自然なことであるが、多くの者が 2000 年から 2001 年のインターネットバブル崩壊、1929 年のウォール街大暴落( the Great Crash of 1929 )、2008 年から 2009 年の世界金融危機( the Great Financial Crisis of 2008-09 )から得られる教訓を探そうとしている。そこで示唆に富んだ著書を紹介したい。著名エコノミストのリアクアット・アハメド( Liaquat Ahamed )の新著で、タイトルは「 1873 年: ロスチャイルド家、第一次世界大恐慌、近代世界の形成( 1873: The Rothschilds, the First Great Depression, and the Making of the Modern World )」である。アハメドが主張しているのだが、鉄道が革新的技術であった 19 世紀にも目を向けるべきである。「今となっては遠い昔の話であるわけだが、鉄道バブルの物語は、現在の経済的苦境( economic woes )との類似点が驚くほど多い」と彼は指摘している。

 スペース X の IPO で、世界初の兆万長者となったマスクは、「経済的苦難」という言葉に異議を唱えるかもしれない。しかし、アハメドが 2 つを比較したことは妥当である。19 世紀の第 3 四半期は、グローバル資本主義が大きな進歩を遂げ、楽観主義とリスクテイクの波が生まれた。大規模な鉄道網の建設は、1830 年代にイギリスで始まった。それが、アメリカ、ヨーロッパ大陸、さらにそれ以外の地域へと広がった。たくさんの起業家が引き寄せられた。先見性のある者もいればそうでない者もいた。誠実な者もいれば山師もいた。多くの個人投資家も引き寄せられた。彼らは鉄道会社が拡張資金を調達するために発行する株式や債券をこぞって購入した。また、膨大な額の政府補助金も投じられた。

 アメリカでは、ジェイ・クック( Jay Cooke )という人物が、鉄道債券の販売に心血を注いでいた。特に 2 番目の大陸横断鉄道の建設を目指していたノーザンパシフィック鉄道( Northern Pacific Railway )の鉄道債の販売に注力していた。クックは南北戦争中に北軍債の販売で成功し巨万の富を築いたフィラデルフィアの金融家である。ちなみに一番最初の鉄道網はユニオン・パシフィック( Union Pacific )とセントラル・パシフィック( Central Pacific )が建設し、1867 年に完成した。1870 年代初頭には鉄道有価証券への需要は「一種の熱狂( sort of mania )」にまで達した。当時のネイション( Nation )誌を見ると、クックの富は際限なく増え続けるように見えたとの記述がある。

 同時期のロンドンでは、精力的な株式相場操縦者のアルバート・グラント( Albert Grant )が、活況を呈している投資環境を利用し、リマ鉄道( Lima Railways )やリスボン蒸気路面電車会社( Lisbon Steam Tramways Company )など、出自不明の遠隔地の鉄道事業会社の株式を発行していた。この人物は、アンソニー・トロロープ( Anthony Trollope )の小説「現代の生活( The Way We Live Now )」に登場する悪徳金融家オーガスタス・メルモット( Augustus Melmott )のモデルとされている。ドイツでは、アハメドが「謎めいたプロイセンの鉄道王」と評するベセル・ヘンリー・ストロスバーグ( Bethel Henry Strousberg )が、15 万人を雇用し、プロイセン、ハンガリー、西ロシアにまたがる 1,500 マイル以上の鉄道網の敷設を完成させた。3 年間でインフラ関連企業を含む約 450 の新興企業がベルリンで株式を発行した。株価が倍以上になった規模が大きい優良企業も少なくなかった。銀行株はとりわけ人気が高かった。伝統的に銀行を高利貸しと見なして軽蔑してきた地主や貴族でさえ、この熱狂には抗えなかった。 「大臣、将軍、王子、伯爵などが、株式市場に跋扈する狡猾な狼たちと競い合いながら、株式投資に興じている」と、この状況を興味深く観察していたフリードリヒ・エンゲルス( Friedrich Engels )は書いている。

 こうした投機的な状況は一般的にバブルと表現される。非生産的なバブルと生産的なバブルがある。区別することが重要である。非生産的バブルでは、投機対象は本質的な価値がほとんど、あるいは全くない。一方、生産的バブルでは、後に大きな経済的価値を生み出すものが投機の対象となる。関連産業等の株価も急騰する。17 世紀のアムステルダムでチューリップバブルが崩壊した時も、2021 年にミーム株現象が崩壊した時も、価値のあるものは何も生み出されなかった。対照的に、鉄道バブルや インターネットバブルは、線路、車両、光ファイバーケーブルといった重要なインフラを後世に残した。

 AI 企業とアマゾン・ウェブ・サービス( Amazon Web Services )やマイクロソフト・アジュール( Microsoft Azure )などのハイパースケーラーと呼ばれるクラウド企業がデータセンターやその他の AI インフラストラクチャに費やす金額については、多くの議論がなされてきた。確かに、その額は莫大である。調査会社 IDC によると、サーバー、ストレージ、ネットワークだけでも、今年の全世界での支出は 5,000 兆ドル近くになるという。ある分析では、ハイパースケーラーによる AI 支出だけで、アメリカの GDP の 2% に達する可能性があると推定している。しかし、経済規模の面から比較すると、鉄道建設のために調達され支出された金額はさらに大きかった。「 3 年以内に、鉄道債券市場に 15 億ドル近くが流入した。ピーク時には GNP の 5% という驚異的な額に達する前例のない資本投入となった」とアハメドは書いている。「鉄道会社は徐々に増加し、1872 年末までに 300 社以上がニューヨーク証券取引所に証券を上場した」。

 アンソロピックやオープン AI 以外に、AI スタートアップ企業で株式を発行するところが何社出るかは現時点では分からない。しかし、鉄道ブームの際との類似点がもう 1 つ存在している。AI 関連株への熱狂が世界規模に広がっていることである。サムスン電子や SK ハイニックスといった半導体メーカーの本拠地である韓国がよい例である。過去 12 カ月間で、韓国株価総合指数( Kospi stock index )は 3 倍に上昇した。多くの投資家が証券担保ローン( margin loans )を借り入れたり、信用取引でさらにポジションを拡大している。先週、こうしたレバレッジ取引があまりにも進んだため、韓国の多くの証券会社が顧客に提供できる信用限度額に達したことを明らかにした。