本日翻訳して紹介するのは、Jerome Groopman による書評です。the New Yorker の April 13, 2026, issue に掲載されたものです。タイトルは、” We Are All Constantly Mutating—and That’s a Good Thing “(私たちは皆、絶えず変異し続けている―そしてそれは良いことである)です。スニペットは、” Genetic research has been complicating the idea of the genome as a determinative blueprint.”(遺伝子研究は、ゲノムを決定的な設計図とみなす考え方を複雑化させている)となっています。Jerome Groopman はスタッフライターで、医療や生物学をカバーしています。
さて、今回翻訳したのは、DNA の変異について書いた書籍に関する書評です。私は、新聞に載っている書評を読んで面白そうと思った本を買うことがしばしばあります。特によく読んでいる書評は讀賣新聞のものですが、ときどき誰も読まないような本の書評があります。宗教関連とかで 1 冊 7 千円するような本が紹介されています。こんなん読む人いるのかな?と思うわけですが、読めばそれなりに面白いのかもしれません。思うに、讀賣新聞の書評はかなりまともです。
今回翻訳して初めて認識したのですが、遺伝子とか DNA とかいうと直系尊属から受け継いだ不変のものと思っていたのですが、そうではないということです。放射線や太陽光や何らかの刺激等によって DNA が複製する際に不正にコピーされるそうです。DNA は膨大に存在しているのですが、常にそのうちのいくつかが変異しているのです。私は、ジャミラを思い出しました。ウルトラマンに出てきた。空気も水もない惑星に取り残された宇宙飛行士が変貌した姿でした。あのイメージがあるから、変異というと悪いイメージを思い浮かべていました。しかし、良い変異もあるとのことです。
ここで留意しないといけない点があります。DNA は子孫に引き継がれるわけですが、突然変異した DNA は子孫に引き継がれるか否かという点です。今回翻訳した記事のポイントでもあるのですが、1 個の人間の身体を構成している無数の細胞の DNA はすべて同じではないのです。上で述べた変異は、それが起こっている細胞もあれば、起こっていない細胞もあるのです。変異の数自体は毎日億単位で起こっていて、それぞれの変異は細胞ごとに現れたり現れなかったりです。つまり、人間の細胞は 1 個 1 個すべて違う。モザイク状なのです。それで、生殖器に起こった DNA の変異のみは子孫に引き継がれます。つまり、引き継がれる変異とそうでないものがあるのです。マリンスポーツ好きで日光を浴びすぎて変異を起こしたかもと思っている方も心配する必要はないのです。まず、それが悪い変異とは限りません。また、生殖器で変異が起こっていなければ子孫には受け継がれないのです。
さて、話がそれましたが、以下に要約を掲載し、その次のページに和訳全文を掲載します。要約を読んで面白そうと思った方は和訳全文をご覧ください。
要約
体細胞変異が変えるゲノムの常識
- 体細胞変異とは何か
- DNAは不変の設計図ではなく、胎児期から死ぬまで絶えず変化(変異)し続けている 。
- 親から受け継ぐ「遺伝性変異」とは異なり、細胞分裂時のコピーミス等で生じるものを「体細胞変異」と呼ぶ 。
- 成人の体内では1日に何兆個もの新しい変異が獲得され、身体は遺伝的に異なる細胞が混在する「モザイク状態」にある 。
- 疾患と変異の二面性
- 負の側面:がんや難治性の脳疾患などは、特定の体細胞変異が引き金となって発症する 。
- 正の側面(自己修復):遺伝性疾患(筋ジストロフィー等)において、体細胞変異が偶然にも異常を修正し、症状を軽減させる「自然遺伝子治療」のような現象が確認されている 。
- 適応と進化への影響
- 私たちの免疫系(抗体産生)は、DNAをあえて組み換える「意図的な変異」によって未知の病原体に対応している 。
- 変異は単なる「エラー」ではなく、生命が環境に適応し、解決策を見出すための動的なプロセスである