Grocery Shopping in the Age of Explosive Diarrhea
爆発的な下痢の時代の食料品の買い物
The cyclospora outbreak lays bare our underfunded and overwhelmed public-health system.
サイクロスポラ感染症の流行は、資金不足と過負荷状態にある我が国の公衆衛生システムの実態を露呈させた。
By Jessica Winter July 23, 2026
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7 月 10 日、とある知人からのメッセージを受信した。巷で流行している下痢に関するものだった。「もし私が激しい水様下痢( explosive-diarrhea disease )になったらどうしよう?」と彼女は書いている。彼女は、五大湖周辺の複数州で蔓延しているサイクロスポラ( cyclosporiasis )という寄生虫が引き起こす寄生虫病に関する記事へのリンクを添えていた。ミシガン州では、群を抜いて被害が大きく、5 月に感染例が初めて確認されて以降、症例数は 1,000 件近くに達していた(例年は 50 件程度)。しかし、疾病対策センター( the Centers for Disease Control and Prevention:略号 CDC )が発表したアメリカ全土の確定症例数はわずか 145 件であった。著しい矛盾が見られる。その数字はミシガン州だけの報告症例数と比べても桁違いに少ない。
友人のテキストメッセージを受け取ってから 1 時間以内に、私のノートパソコンにはサイクロスポラ感染症関連のタブが 48 個も開いていた。サイクロスポラは、人間の糞便で汚染された農産物に見られる腸管寄生原虫だと分かった。おそらく、農産物が栽培された農場の仮設トイレが豪雨で浸水したか、汚染された水が灌漑施設に入り込んだか、洗浄に使われたことが原因だろう。サイクロスポラ寄生原虫はオオシスト( oocyst:嚢胞)と呼ばれる丈夫な殻に入って移動する。この殻のおかげでベリー類の隙間や特定の葉野菜の隆起やひだにつかまったりして付着できるのである。そして、加熱調理しない限り、そこで死滅することはない。生き延びたオオシストが人間の消化管に到達すると、外側の被膜が溶解し、この寄生原虫は小腸に西ゴート族( Visigoth )の侵略のように雪崩込む。吐き気( intestine )、腹痛( nausea )、そして「水様性下痢( watery diarrhea )」「止まらない下痢( relentless diarrhea )」、そして最も鮮烈な表現では「爆発的下痢( explosive diarrhea )」と表現される症状を引き起こす。
「制御不能で、非常に流動性が高い」と、ミシガン大学の疫学者ジョセフ・アイゼンバーグ( Joseph Eisenberg )は語る。「あなたがコレラ病棟の写真を見たことがあるなら、患者が担架に乗せられていて、その担架には尻が入る穴が開いていて、その穴の下にバケツが置いてあるのを覚えているかもしれない。それと非常によく似ている」。サイクロスポラ感染症は抗生物質で治療でき、通常は命に関わる病気ではない。とはいえ、つらい症状が 1 カ月以上続くことがある。
通常、食中毒の原因究明には、綿密な検査室での作業と、患者への徹底的な聞き取り調査が必要である。患者が、数週間前に何をどこで食べたのかを思い出すのに苦労することもある。サイクロスポラは、大腸菌( E. coli )やサルモネラ菌( salmonella )などの細菌とは異なり、実験室では培養できないため、特に厄介な病原体である。「サイクロスポラの問題点は、人体以外では増殖せず、まず宿主を必要とすることである」と、ミシガン州立大学食品科学栄養学科のフェリシア・ウー( Felicia Wu )教授は語る。「誰かが病気になるまで待ってから、糞便サンプルを検査し、『ああ、確かにサイクロスポラが見つかった』という形で判断するしかない」。
サイクロスポラ感染症の症例が急増し続ける中、ソーシャルメディア上では多くの素人探偵が、アメリカ人の腸に潜む謎を解き明かそうと調査を開始した。彼らの会話の中でブルーベリーがよく話題に上ったのは、ブルーベリーの旬が近づいていたからかもしれない。あるいはサイクロスポラ感染症の発生と、7 月上旬に 8 州のパブリックス( Publix:アメリカ南東部でメジャーなスーパーマーケット)店舗に出荷された冷凍ブルーベリーが大腸菌汚染のおそれがありリコールされた件を彼らが混同したからかもしれない。イチゴも、少なくとも我が家では、疑いの目で見られた。コネチカット州北部の農産物直売所で、私はシーズン晩期に収穫された完璧なイチゴを小さなかごで買った。ふっくらとして小ぶりで、まだら模様の茜色だった。しかし、家に帰って 11 歳の娘がイチゴを洗ったとき、いつもなら無害な綿毛の断片であるはずのものが、姿を変えたオオシストに見えた。こうなると心配は止まない。結局、イチゴは食べられないまま冷蔵庫に入れたままになった。
オンライン上のサイクロスポラに関する話題はすぐに袋詰めのレタスやサラダミックスに集約された。子育て人生で初めてのことであるが、私は子供たちが生野菜を嫌がることを喜ぶことができた。Reddit 、Facebook 、TikTok 上での主な容疑者はカリフォルニア州に拠点を置くテイラー・フレッシュ・フーズ( Taylor Fresh Foods )だった。同社は数十億ドル規模の農産物供給業者である。業界最大手企業の 1 つである。同社は、2013 年のサイクロスポラ感染症の発生、 2024 年の大腸菌の集団感染など、数々の食品リコールや食中毒に関与している。また、労働組合つぶしや数々の労働法違反でも非難されている。カリフォルニア州の同社施設で化学物質が流出した際に従業員に強制的に働かせたことや、ニュージャージー州の工場で従業員が死亡する事故が発生したにもかかわらず、危険な労働条件に対処しなかったことなどが理由である。なお、同社にコメントを求めたが回答は得られていない。
良心的な理由であれ、下痢を避けるためであれ、テイラー・フレッシュ・フーズとその子会社が製造したものを避けたい消費者は、ほとんどの大手スーパーマーケットで販売されているテイラー・ファーム( Taylor Farms )ブランドのサラダミックスや調理済みサラダを避けるだろう。しかし、同社はアメリカ最大の食品卸売業者であるシスコ( Sysco )にも農産物を販売しており、コストコ( Costco )、トレーダー・ジョーズ( Trader Joe’s )、ウォルマート( Walmart )、クローガー( Kroger supermarket )などのスーパーマーケットチェーンで販売されている、いわゆるプライベートブランド(ストアブランド)のサラダ材料やカット野菜も供給している。つまり、テイラー・ファームのレタスは食料品流通システムの至る所に存在しているが、マイクロプラスチックや抗生物質、小さなカビやハサミムシのように、必ずしも目に見える形で存在しているわけではない。鮮度の悪いサラダと同じで、見ただけで判別するのは不可能である。
私は知人からメッセージを受け取った 2 日後に、マサチューセッツ州の近所のスーパーマーケットのレジ列で並んでいると、後ろに高齢の男性がいた。彼の買い物カゴの中にはブルーベリーと袋入りのサラダミックスがあった。「両方ともしっかり洗わないと危険ですよ」と私は彼に言った。彼は耳に手を当てたので、私はもう一度言った。「あの恐ろしいウイルスが流行っているんですよ」と付け加えた。彼は丁寧にうなずき、自分の番がくるのをじっと待っていた。私は駐車場に着いて初めて気づいた。よく考えたら、シクロスポラ症はウイルスによるものではない。ちょっとだけ誤情報を広めてしまったかもしれない。