世界の未来は中国にかかっている? EV・半導体・ドローンに続いて AI でも中国が世界覇権を奪う未来?

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 私は中関村をしばらく散策した。暑い午後だったので、結構な数の配達員が影ができている高架下に集まってタバコを吹かしていた。経済の減速に伴い、2 億人以上の中国人がギグエコノミーに参入している。配達員は 2,000 万人ほどいると推定される。彼らはどこに行っても目立つ。新しい時代の象徴となっている。

 2018 年に胡安焉( Hu Anyan )という青年が北京で配達員として働き始めた。その前には、コンビニ店員、自転車販売員、警備員などの経験があった。毎日 11 時間労働だったが、e コマースサイトがセールを実施して注文が急増すると、勤務時間はさらに長くなる。「それでも、勤務終了時刻までにその日の荷物をすべて配達しなければならず、15 時間か 16 時間かかることもよくある」と彼は語る。彼は、自分ではどうすることもできない障害に常に気を配っていた。エレベーターの速度の遅い建物や、開けてもらうまで待たされるセキュリティのある門などである。1 日約 40 ドルの目標を達成するには、4 分に 1 件の割合で配達を完了させなければならない。トイレ休憩には約 2 分かかる。彼はできるだけ水を飲まないようにした。

 胡はいろいろなところに勤めてきた。これも時代であるが、どの雇用主もアルゴリズムを活用していた。世はまさに AI やアプリによる自動管理の時代である。彼は、現在の勤め先で管理職の 1 人から「管理システムが配達すべきものは全て指示する。君は代わりのきく歯車でしかない」と言われた。彼は腹を立てたが、「その上司も実際には巨大な仕組みの中の歯車の 1 つに過ぎない」と気づいたという。時が経つにつれ、アルゴリズムに奉仕する生活が、彼の人間関係に対する感覚を変えていった。彼は同僚に憤りを感じるようになった。また、彼らの仕事をゼロサムゲームであると感じるようになった。「ベテラン社員は簡単なルートを自分の割り当てとして長く維持する。一方、不利なルートを押し付けられた新人はさっさと辞めていく。別の者が代わりに入ってくる」と彼は語る。彼は以前よりもせっかちになり、怒りやすくなった気がするという。彼を最も不安にさせたのは、自分が知らぬ間に無感覚になりつつあることだという。ある日、1 人の高齢の顧客が市場で彼を 3 時間待っていたのだが、彼はそのことを知っても気の毒だとは思わなかったという。「普通の人ならちょっとだけ罪悪感を感じるだろう」と彼は言う。 「でもその時まだ配達しなければならない荷物が山ほどあった。彼のために立ち止まる時間は無かった」。

 胡は配達員として 20 カ月間働いた後に仕事を辞めた。その経験をノンフィクション・エッセイ「我在北京送快递( I Deliver Parcels in Beijing )」に綴った。この本は予想外のベストセラーとなった。これを受けて、中国での不安定な生活を描写した回顧録的な書籍がいくつも出版されて話題となった。「上海でタクシー運転手をする」や「母は清掃員として働く」などである。

 しかし、中国では、不安定な状況に置かれているのは最下層の労働者だけではない。3 月に当局は突然、AI スタートアップ企業マヌス( Manus )の創業者 2 人の出国を禁止した。彼らは自社をアメリカのソーシャルメディア大手メタ( Meta )に 20 億ドルで売却する契約を結んでいたが、中国政府はこれに不満を抱いたようである。一部の人材は国家にとってあまりにも貴重な存在であるため、国外への出国が許されないということが明らかになった。この恐ろしいメッセージは、他の AI 企業の幹部にも確実に伝わった。

 中国経済の長年の経済成長は、自由経済と政治的統制の絶妙なバランスの上に成り立ってきた。1980 年代初頭に党改革派は「鳥かご経済( birdcage economy )」を提唱した。これは、経済活動や市場の自由化は認めるものの、それはあくまで国家の計画経済という枠組みの中でなければならない、という統制重視の経済形態である。この体制は、かつてないほど危ういものとなっている。中国で豊富な投資経験を持つアメリカ人投資家のゲイリー・リーシェル( Gary Rieschel )は昨年、講演した際に語った。「習近平は中国の驚異的な台頭という金の卵を産むガチョウを繋ぎ止めようとしている」。彼はさらに付け加える。「誰も知らないと思うが、ガチョウは繋がれるのを好まない。重要なのは、北京の指導部が、統制とダイナミズムの微妙な関係を効果的にバランスさせることができるかどうかである」。