12.
北京に滞在していた際に、たまたま午後に 1 時間ほど時間ができた日があった。シェアサイクルの QR コードをスキャンし、新鮮な空気を味わいながら街の反対側まで自転車を走らせた。途中、数人の配達員に危うくひき殺されそうになったが、自分の細かな一挙手一投足に対して、リアルタイムで評価やフィードバックを返されることのない場所にいられることは、実に心地よいものだった。
インタビューで断定的な計算や予測をいくつも聞かされた。しかし、未来は予測するにはあまりにも不透明である。ましてや小数点以下何桁にもわたって正確に定めることなど到底不可能だという思いが拭えなかった。中国では若者の間で、占いが新たな流行となりつつある。アメリカの若者と同じように、飲むために街に繰り出し、占星術の鑑定を受けたり、占星術アプリを使ったりする。ちなみに中国語の「占い」という単語と「アルゴリズム」を意味する単語には、同じ漢字が含まれている(訳者注:前者は算命、後者は算法)。
北京には何世紀にもわたって占い師が存在してきたが、共産党はこれを封建的迷信活動( feudal superstitious activities )と呼び、定期的に取り締まっている。しかし、彼らはいつもひっそりと戻ってきて、仏教寺院や儒教寺院の近くのエリアで鑑定を再開する。私は孫先生( Master Sun )と呼ばれる 70 代前半の男性占い師を紹介された。彼はいつも占いをしているわけではなかった。占い師もギグワーカーなのである。会う日時を決めて落ちあった。実用性重視の少し野暮ったい青い防寒ジャケットに神秘的な雰囲気を放つ翡翠のネックレスを身に着けていた。彼は自転車を引いて歩いていた。自転車には前カゴがついている。フレームは、まだ保護用のプラスチックのラップが巻かれたままだった。まるで、飲み物をこぼして汚さないように保護されたソファのようだった。
孫先生の占い部屋は 1 ブロック先にあり、並んで歩いている際にどうやって北京語を話せるようになったのかを尋ねられた。私は以前中国に住んでいたことがあり、現在はアメリカに住んでいると説明した。「アメリカは強大な国である」と彼は言う。
「中国も強大な国である」と私は答える。
「アメリカほどではない」と彼は言う。
彼の占い部屋は、コンビニエンスストアの裏にひっそりと佇んでいた。机の上には小さな祭壇、陶器の仏像、香炉があった。3 つの瓢箪と、チョコレートバーも置いてある。彼は私の手相をじっと見つめ、数枚の銅貨を私に手渡しして投げさせた。生年月日も尋ねた。しばらくして紙に何かを書き始めた。その作業を見ながら思ったのだが、彼は共産党の指針に抗い、アルゴリズムの時代にも抗い、自分の尊厳を保ちながら生き抜く方法を見つけたのである。しばらくして、彼は眼鏡越しに私を見て、「あなたの運勢が見えた。あなたには高貴な運命が待っている」と言う。
私は彼の占いが気に入った。チャット GPT に質問する際の要領と同じである。何度もやり取りすることができる。私は質問した。「子供たちを立派に育て、明るい未来を与えたいのだが、どうすればよいだろうか?」
孫先生は少し考えてから言う。「彼らには大きな知恵を授けるべきである。お金を与えるよりもずっと大切である。しっかり勉強させるようにしなさい。そうすれば、富は自然とついてくる」。
彼は親切に占ってくれた。だが、私は、そもそも私の問いの答えを知っている者など誰もいないと考える。最後に、孫先生は折りたたまれた赤い厚紙の束を取り出した。私に 3 枚を選ぶように指示した。彼はそれらを見て、「政治の権力か、莫大な富のどちらかを手に入れる運命である」と告げる。これ以上ないほど良い結果だったので、私はここで占いを切り上げてもらいたいと思った。しかし、占いはまだ 76.67% しか終わっていなかった(孫先生は私が選んだ 3 枚のカードのうちの 2 枚しか見ていない)。
しかし、孫先生は占いを続け、私が最後に選んだカードを手に取った。そこには「喜びが扉をノックする」と書かれている。彼はそれが最も幸運なカードだと言い、「この幸運を守るために少しお金を使うべきである」というアドバイスをくれた。
えっ?と思ったが、私は尋ねた。いくら?
「 660 元」と彼は答える。約 97 ドル。
私は占い師と議論するつもりはなかった。彼は複数の決済方法に対応していた。私たちはそれぞれスマホを取り出した。私は彼に送金した。♦
以上